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留学体験 - 高嶋信孝さん

アスレティックトレーナーを目指して

高嶋信孝さん
大阪府出身。 中西部にある州立大学 アスレティックトレーニング学科在籍。 語学力や、コミュニティーカレッジからの編入等、様々な難関を乗り越えて 2003 年晴れてアスレティックトレーナー学科入学。忙しい日々を送りながら夢に向かってまっしぐら!

僕がアスレティクトレーナーを目指して留学を決意したのは、高校3年の春頃でした。きっかけは、高校3年間を通してバレーボール部に所属し、そこで自分がスポーツをとても好きである事と、プレー以外に練習内容を構成したり応急処置を行ったりしているうちに、スポーツ現場で選手を手助けできる職業に就きたいと思ったことからです。そして、日本でトレーナーと呼ばれる職業に就くにはどのような学校、学部に行けばいいのかを探し始めました。

しかし、その当時は日本でアスレティックトレーニングを学べる学校はとても少なく、大学レベルでは一校も存在しませんでした。そして、「スポーツと言えばアメリカ」と言う勝手な想像でアメリカにおけるアスレティックトレーニングについて調べ始めました。そこで、アメリカがアスレティックトレーニングの分野がとても充実していることを知り、留学してみようと考え始めました。

留学を決意したものの、高校時代、決してよい成績ではなかった英語をどうにか留学までに身に付けたいと思い、英語と留学の準備を兼ねてアメリカに提携校がある日本の専門学校に 1 年間通いました。 学校選びに際して、英語力や授業料の面から短期大学(コミュニティカレッジ)に入学して、それからアスレティックトレーニング学部を持つ4年制大学に編入するという道を選びました。そして翌年の7月、ニューヨーク州立の2年制短期大学でESLのクラスを取り、9月に正規留学生として短期大学に入学しました。

短期大学時代、専攻は Health, Physical Education, and Recreation (体育健康学科)に在籍し、主に一般教養のクラスを中心に取りながら、体育の分野の基礎も勉強しました。一般教養といっても体育に関係したクラスが多く、例えば生物、物理、化学、フィットネスのクラスなどを取りました。その他に英語や歴史のクラスも取りました。

短期大学を2年で卒業し、その後、現在の4年制大学に編入しました。同大学のアスレティックトレーニング学部へ入るためには同大学に1学期間の在籍が必要で、編入といってもなかなかうまくいかず、1学期間はどの学部にも所属することができませんでした。 学部に入るためにはその他にもGPA 2.8以上、50時間以上の観察と実習、書類審査、小論文、面接、推薦状などが必要で、日本の大学受験のように選考審査で選ばれなければなりませんでした。

アスレティックトレーニング学部は他の学部や選考と違い特化した学部で、学部に在籍できる生徒数は30人程度と少なく、学年は2回生から 4回生という感じです。僕は学部に入るために今までにない努力をしました。 実習には100時間行き、小論文も何度も書き直しし完璧な物に仕上げました 。と言うのも、現地の人と違い、州立でも留学生は学費が高く、アルバイトも、キャンパス内で週20時間しかできないので、もし学部に入るのが遅れれば卒業するのが遅れ、その分余計な出費が出て時間もお金も無駄になるからです。

そして、2003年の春学期からアスレティック トレーニング学部で勉強できることになりました。僕が出願した学期は15人程が出願して、学部入りできたのは僕を含め4人でした。

学部に入ってからは、怪我評価学(Injury Evaluation)や運動傷害処置法学(Prevention and Care of Athletic Injuries)などの授業を取りました。現在はリハビリテーション学(Rehabilitation Exercise)やアスレティックトレーニング運営管理論(Organization and Administration of Athletic Training)の授業を取っています。

アスレティックトレーニング学部に入ってからは、忙しい学生生活を送っています。と言うのも、アスレティックトレーニング学部を卒業しNATA(National Athletic Trainers’ Association)公認資格の受験資格を得るためには、学部在籍中に800時間以上の実習が必要です。そのために、平日の午後は大学所属の部活に派遣されて、実習を積み重ねています。

休日も試合がある時や練習があれば、基本的には実習に出かけなければなりません。そのため、午前中に授業を取って、午後からは実習、休日は朝から出かけたりして他の学部にはないとても忙しい生活をしています。この調子で実習をしていれば学部在籍中に800時間以上は軽く超すはずです。

アスレティックトレーナーは魅力のある仕事ですが、このように、資格取得までには数々の苦労や難関を突破しなければなりません。練習には選手より早く来て準備し、後片付けをして帰りも遅くなります。重いものを持ったり掃除をしたり、雑用もたくさんあります。それに実習で忙しくても、学生の間は勉強もしっかりしなくてはなりませんし、タイムマネージメントがとても大切です。

アスレティックトレーニングを勉強するためにアメリカに留学することは、想像以上に大変なことです。僕が高校生の時代と違って、現在は日本にもアスレティックトレーニングを勉強できる専門学校などもあり、トレーナーになりたいと思っているならば日本で勉強することも選択肢の一つです。

留学は英語も勉強しなければならないし、異文化への順応性も必要です。それに、僕の友達のように、ここぞとばかりに羽を伸ばして遊びに集中してしまい、勉強に気が入らないなんてことも多々あります。それに、NATAの資格を取得しても日本では法的な医療資格ではないことも将来、仕事を探すにあたって考慮に入れる必要があるでしょう。

とは言え、アメリカでアスレティックトレーニングを専攻することはまだまだ魅力的だと思います。いくら日本でこの分野を勉強できるとは言え、アメリカに比べ日本はこの分野ではまだまだ後進国だと思います。

アメリカでアスレティックトレーニングを学ぶことのアドバンテージは、苦労や困難を計算に入れてもプラスだと思います。日本と違って、長い歴史があり確立されたプログラムの中で学び、実習を積めることは、大いに魅力的なものです。そこで得た知識やNATAの資格は立派な留学の証だと思います。

この分野で歴史が浅く、アスレティックトレーナーが職業として確立されていない日本では、資格や法律、仕事や組織の問題があるけれど、留学で得た知識、資格を武器に日本で活躍されている先輩方もいらっしゃいます。 実習でよくスーパーバイザーのスタッフトレーナーや選手達と毎日コミュニケーションを取っているので英語もなかなか上達し、もし、トレーナーになれなくても語学の力で何か仕事を見つけることも可能だと思います。

この分野で立派に留学を成功させたいなら、文化の違いに順応でき、英語の壁を乗り越えることができ、そして本当にアスレティックトレーナーになりたい、アスリートを影で支えるのが好きだと思う皆さんにアメリカでアスレティックトレーニングを勉強してもらいたいと思います。