最近では推薦入学やその他の入試方法も結構増えてきましたが、比率的にはまだまだテスト1発での入試が主流を占めています。正に出願から合格発表まで入学試験関連の日程が集中する時期です。寒い時期なので、試験日に大雪が降って交通機関に影響が出ると、ニュースでも大きく報道され、家族や学校も対応に追われて大混乱が生じます。インフルエンザや風邪も流行する時期なので、受験生も体調管理に万全の注意を払わなければなりません。言わば「受験シーズン」とは日本の風物詩とも言えます。風物詩と言っても受験生には、無事に早く終わって欲しい歓迎されないシーズンです。
皆さんの中には「こんなことは昔からやっていることで、当たり前のことだ」と思っている方も多いかも知れません。ところが目をアメリカに転ずると、アメリカには「受験シーズン」という言葉も概念も存在しないのです。まず「入学試験だけで合格を決める」という制度・発想自体が無いのです。入学の選抜は、学校や全国共通テストの成績、エッセイ(小論文)、推薦状、面接など様々な情報を基に、総合的に判断して受け入れる学生を決めます。どれを重要視するかは各学校の判断に任されていますが、言えることは勉強だけが出来ても合格は難しいということです。エッセイや推薦状、勉強以外に取り組んできたことなどが非常に重視されます。これは「生徒の過去の成績」よりも「生徒が入学後に伸びる可能性」を重視しているからです。また「この学校に合った生徒かどうか」も重視されるポイントです。
また願書出願の日程も学校により様々で、早いところでは入学の10か月も前から受け付けを始めます。締め切り時期も様々で、もし揃っていない書類があれば、学校と交渉すれば、その書類だけ期限を延ばしてくれることもしばしばあります。合格発表も「ヨーイどん」での一括発表ではなく、学校の基準をクリアした上位の学生から順番に合格通知を出していきます。合格通知が中々来ないので諦めていたら、ぎりぎりのタイミングで通知が来たという例もしばしばです。万一不合格の場合でも「この生徒はこの点が大変優れているので、是非もう一度再考していただけなか」と交渉することも可能です。IGEの留学生でもこうして逆転合格した生徒が何人もいます。アメリカでは入学に関することは、各学校の自由裁量に任されているため、様々な考え方で運営されており、とてもフレキシブルなのが特徴です。
以上のような違いは、日本の「就活シーズン」という言葉にも見ることが出来ます。日本では何月何日から就職活動解禁(会社訪問や会社説明会スタート)、何月何日から選考・内定出し、などと決められているため、その時期になると、学生が同じようなダークスーツに身を包み、同じような黒カバンを持って一斉に活動を開始します。従って街中では一目で「就活シーズンがやって来た」と感じることが出来ます。ところがアメリカでは就職活動にこのような日程の縛りは無く(というよりそういう発想そのものが無い)、企業も学生も自身の考えで自由に活動するので、「シーズン」という概念が存在しないのです。特に同じスーツを着て、同じカバンを持った集団が突如現れるのは、アメリカの感覚では異常と思われてしまうことでしょう。
このような集団行動、横並び型の日本とそうでないアメリカ、同じ資本主義、自由主義の国なのに、これほどの違いがあることはとても興味深いことだとは思いませんか。このことを論じ始めたら、両国の文化的、歴史的な背景にさかのぼって考察する必要があり、一冊の本が書けそうな感じがします。とは言いつつも、目前に受験を控えている皆さんは、まずはこれに集中していただき、見事合格を勝ち取ったら、是非日本だけでなく世界を視野に入れて色々な勉強に取り組んで下さい。日本には「日本の常識は世界の非常識」、「世界の常識は日本の非常識」と言う物事が沢山存在しています。まずは身近なことから考え疑問を持つことで、視野が大きく広がって行くと確信します。
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