HOME > 留学体験記 > <アメリカ大学院留学> 世界で活躍する移民弁護士を目指して

留学体験 - 李 彦(イエン・リー)さん

<アメリカ大学院留学> 世界で活躍する移民弁護士を目指して

李 彦(イエン・リー)さん
2005年にコミカレ留学し、2007年UCLAに編入。 2009年UCLA卒業後は、1年間のOPTを経て、現在Santa Clara University 大学院ロースクールに在学中。

渡米して7年。渡米時は未成年だったのに、今はもう結婚してもおかしくない歳になったのかと思うと、時の流れを感じます。渡米した時は、異文化のアメリカで視野を広げ、能力を付け、4大卒業後に好きな職に就き、有意義でのほほんとした生活を送るつもりでした。

しかし、視野を広げた結果、好きな職を「弁護士」と決めたのが運の付き(「尽き」では決して、、、)。厳しく難しいが、最高に面白いアメリカロースクールに入学することになりました。のほほんとした生活を惜しむ気持ちはありますが、自分が情熱を込められる職に就くことの方がきっとより幸せに感じるはずなので、私としてはこの「変化」に満足しています。

大学卒業は2009年6月でしたが、実際には3月に単位を取り終え、卒業式までは、ロースクールに入るための試験「LSAT」の勉強をしました。アメリカは日本と違い、基本的に入学試験というものがありません。大学も大学院も、入学の合否は、学校の成績、LSAT等の統一試験、履歴書、エッセイなど複数の書類をもとに決められます。ロースクールの場合、大学の成績とLSATの成績が合否の70%を占めると言われています。それでも、残りの30%は勉強とは関係ない課外活動や仕事経験、またその人の性格や考え方が分かるエッセイなどにかかっているというのがアメリカのすごいところ。アメリカの教育が、成績だけでではなく、一人一人のトータルな能力を評価しているという事を改めて感じました。

卒業式が終わると、就職活動です。アメリカでは、日本と違って、4年生は卒業するために取らなければならない授業に追われ、勉強で精いっぱいというのが普通。私も、卒業してしばらく経ってから、弁護士事務所に就職が決まりました。留学生でも、OPT(Optional Practical Training)を利用すれば、1年間、専攻に関連した分野で就職ができます。

働きながら、LSATの勉強を続け、ロースクール受験の準備をしました。申請書類で重要なのは、LSATのスコア、大学の成績(GPA)、推薦状とエッセイです。特に、推薦状とエッセイはくせ者で、準備するのに時間が掛かります。推薦状は、大学の教授に書いてもらうのですが、この時期は教授も沢山の生徒から頼まれているので、書き終えるまでにかなり時間が掛かります。エッセイも、殆どの学校が「好きなことを書いて下さい」という指示しかないので、私は何を書くべきかという第一段階で悩んで、結構時間を費やしてしまいました。

アメリカのロースクール受験の面白いところは、合否が、”Rolling Base”であること。つまり早い者勝ちです。殆どの学校は、(1年前の)9月から翌年の3月頃まで申請を受け付けますが、申請書を提出した者から審査をするので、早く提出すればするほど、合格の可能性が高くなります。私もそれを狙ってできるだけ早く申請書類を提出しました。

その結果、Santa Clara University大学院に進学を決めました。Santa Clara市は、サンフランシスコの南に位置し、緑が豊かできれいな街です。中規模の私立大学で、キャンパスもUCLAほど大きくはありません。しかし、生徒が少ない分、教授やスタッフが一人一人の生徒に対し親身になってくれるので、ストレスをかかえるロースクール生には嬉しいことです。

アメリカのロースクールにはこんな言い伝えがあります。”First Year-Scare to Death, Second Year-Work to Death, Third Year-Bored to Death“· · · つまり、1年目は、並々ならぬ難しさで知られる「ロースクール」という場所に恐れをなし、2年目は、クラス・就活・その他の課外活動で死ぬ程忙しく、3年目には、就活も終わっているから暇で死にそう、ということです。

そんなロースクールの一年目を終えて、私が一番大変だと感じたのはやはり試験です。殆どのクラスが一学期に一度しか試験がないので、その一度のテストですべての成績が決まってしまうという恐ろしさがあります。また、試験の内容も大学とおおいに異なります。大学の場合は、暗記系のテストが多いけれど、ロースクールの試験は、習ったものをいかに応用できるかを試されます。同じ事実に対して同じ法律を適用したとしても、論議する人が違えば結論も異なります。要は、いかに論理立てて議論できるか。従って、正解が一つではないのも特徴。そのため、試験が終わっても、自分が書いた回答が果たして合っているのか間違っているのか、分からない事もしばしば。これも「恐ろしさ」の一つです。このテストスタイルにはずいぶん戸惑いましたが、ここで要求されるスキルは弁護士が実際に必要とするものなので、そういう意味では、早くから練習できて有り難かったです。

2年目を終えた今、”Work to Death“の理由がよく分かりました。 ロースクールの1年目は科目も全て決められていて、とにかく勉強に専念し、仕事やインターンは控えるように言われます。それに比べ、2年生になったとたん、科目やスケジュールを自由に選択でき、法律に関するインターンシップを強く勧められます。同時に、クラブ活動も盛んになります。クラブのリーダーになり、実際にイベントを企画、開催します。学校出版の法律ジャーナルや、模擬裁判の大会などにも参加できるようになります。教授のリサーチアシスタントになることもできます。

私の場合、沢山ありすぎる機会に魅了されて、仕事(校内)、クラブの幹部、法律ジャーナル、及び模擬裁判、これらすべてに参加し、結果、自分の自由時間が殆どないような、大変忙しい一年になってしまいました。その分得られた経験は最高でしたが、自分の力量を考えて取捨選択し、もう少し余裕を持たせてもよかったのではないかと思います。

来年は卒業ですが、卒業しても参考書とにらめっこで司法試験の準備に追われる毎日を過ごしていることでしょう。将来は、移民法の専門弁護士として、日本・中国・アメリカで、多くの人のお役に立てるよう頑張りたいと思います。(2012年7月)