留学体験 - 山田好弘さん
留学こそが、文化理解・生きた語学力を得る最善の方法
”アメリカ留学”…。なんとも魅力的な響きですが、自分自身のコトとなると勇気がいります。現在留学を考えている方々の抱えている期待や不安は、自分も経験者のひとりなのでよくわかります。アメリカ留学のきっかけは日本で大学受験に失敗したからでした。早い話、勉強しなかったんです。20歳で渡米、ロサンゼルス国際空港にほど近い、ウエストLAカレッジに入学しました。
「アメリカへ行けばなんとかなるかも…」という甘ったれ小僧の期待は、入学直後、はかなくもやぶれました。日本語で受けても難解な授業を英語で理解しなければならないのですから、何倍も時間がかかるのは当たり前です。アルファベットで敷き詰められた、分厚いテキストを開いた時の絶望感。”D”(要するに赤点です)の飛び交う成績表。レポートの嵐に沈没寸前の毎日。「僕は決して卒業することはないだろう…」と、妙に確信をしていたのを覚えています。
でも、卒業することだけを目標に「自分は卒業後、何をするのか?」を真剣に考えました。どうにかこうにかして卒業という名の港に漕ぎ付けられたのは、経済的な支援を続けてくれた両親と、アメリカで知り合った諸先輩方の叱咤激励があったからです。
現地でのサポートと十分な資金力。これが、努力を空回りさせないための条件でした。卒業後、現地タウン誌の編集やレースカメラマンのアシスタントをしながらアメリカに居座り、三十路目前にして帰国。愛読していたアメ車雑誌の編集が生業となりました。
今は撮影や原稿書きで徹夜続きの毎日ですが、飽きっぽい私が一生の仕事に巡りあえたのも、留学時代があったからです。社会に出て痛感したのは、語学力の必要性です。百戦錬磨の先輩方にはなくて、自分にあるモノ?… それは、アメリカで過ごした10年間と語学力でした。
私たちの仕事は現地との交渉が日常茶飯事で、海外出張もあります。新米の私に多くの機会が与えられたのも、アメリカ留学という経験があったからこそです。普通なら現地で通訳を探さなければいけないところ、自分一人で行けば経費が半分以下で済むし、それがまた次の出張につながります。
誌面造りにおいても、実際に現地で取材するのと、日本で製作するのとではできるものが違います。もちろんすべての現場に出向くことは不可能ですが、様々なシーンに居合わせた経験が多いほど、最前線の記者が送ってくる原稿の本質を読み取れるのは確かです。
語学力は自分自身のバリューを高める大きな武器になるんだ、と実感しました。インターネットが発達した現在、語学力とPCはワールドビジネスの必須条件になりつつあります。語学力がネックとなって実力を発揮できないビジネスマンの中には、一旦会社を辞めて語学研修に出かける、というケースも決して珍しくない時代です。実際1985年を境に、留学や研修目的で海外へ向かった日本人は約8倍に増え、2000年には20万人にものぼる勢いです。
10年前の私のように、”日本で失敗したから”というのが理由で、今アメリカに逃亡しようとしている人は、相応の覚悟をもってお出かけください。場所は変わっても、同じ過ちを繰り返す可能性はあります。でも、もしあなたに留学のチャンスがあるのなら、その機会を絶対に逃さないでほしい。
受験勉強や厳しい現実から逃げていた私に、ラストチャンスを与えてくれたのがアメリカ留学でした。留学こそが、文化理解を含め、生きた語学力を得る最善の方法だと、私は確信しています。